IFBBはなぜ2つに分裂したのか。その影響は?

IFBBはなぜ2つに分裂したのか。その影響は?

世界で最も大きなボディビル連盟であったIFBB(International Federation of Bodybuilding and Fitness)。2017年に2つの組織に分裂したのをご存知の方も多いと思います。

僕も分裂したことは知っていたのですが、分裂した理由やその経緯はぼんやりとしか知りませんでした。

そのあたりにとても興味があったので、今回調べてみました。

IFBB分裂に関係する組織

IFBBの分裂事件には以下の3つの組織が絡んでいます。

IFBBプロリーグ

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IFBB Professional League(以下、IFBBプロリーグ)は、ジムマニオン(Jim Manion)が会長を務めている組織でした。アメリカに本部を置き、最も大きなプロボディビル大会であるミスターオリンピアの運営を担っています。

IFBBアマチュア

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IFBB Amateur International(以下、IFBBアマチュア)は、スペインに本部があり、会長はスペイン人のラファエルサントーサ(Rafael Santonja)が務めていました。世界各地で開催されるアマチュアボディビルの大会、ナショナルチャンピオンシップなどを管理していました。IFBBアマチュアの大会で上位を獲得した選手にはIFBBプロカードが発行されていました。

NPC

National Physique Committee(以下、NPC)はIFBBの傘下の組織で、IFBBプロリーグと同じくジムマニオンが会長を務めていました。NPCはアメリカ国内で開催されるアマチュア大会の運営を担当していました。IFBBアマチュアの役割の一部(アメリカ国内の大会)を担っているという形で、その大会で上位となった選手にIFBBプロカードを発行していました。NPC主催の大会に出場できるのはアメリカの市民権を得ている選手のみで、その他の選手がプロカードを取得したい場合は、IFBBアマチュアの大会を通して取得する必要がありました。

2つの組織で運営されていたIFBB

分裂の経緯把握するのには、分裂する前までのIFBBの歴史を知ることが重要です。

IFBBは1946年に、ベン(Ben Weider)とジョー(Joe Weider)のウィダー兄弟が発足させた世界で初めてのボディビル連盟です。

発足以来、1つの組織として、プロセクションもアマチュアセクションも運営していました。

2005年、ボディビルをオリンピック競技にするために国際的なドーピングの規制(World Anti-Doping Code)の採択を決定しました。しかしIFBBのプロ大会では歴史的に暗黙でのドーピングが行われており、この規制を守ることが難しかったのでIFBBからプロセクションを切り離すという形で、IFBBプロリーグが組織されました。

こうしてIFBBはIFBBアマチュアとしてドーピング規制を遵守しつつアマチュア大会の運営を担当し、IFBBプロリーグがプロの大会を運営するという組織体系が作られたのです。

IFBB分裂のきっかけ

分裂のきっかけは、2017年のミスターオリンピアの時にNPCとIFBBアマチュアの間で起きた論争でした。

NPCとIFBBアマチュアは、全世界のアマチュア選手が、プロになるために参加することができる大会、オリンピアアマチュアを立ち上げようとしていましたが、NPCがその大会の審査を主導するということを主張したのです。

IFBBアマチュアはこれに反対して、オリンピアアマチュアからの完全な撤退を表明、その上で、NPCの審査員は国際カードを持っていないという理由で、IFBBアマチュアと同等の審査資格を持ち合わせてはいないと批判しました。

さらに、IFBBアマチュアは、NPCに対して一時的な活動の停止を言い渡したのです。

これを受けたNPC会長のジムマニオンは、以下のような声明を発表しました。

アメリカのNPCは正式に、IFBBと提携を取りやめます。

IFBBプロリーグは、以下に示すNPCプロ資格認定コンテストを引き続き承認し支援します。(NPC Jr. USA, JR. Nationals, Teen-Collegiate-Masters, America, Universe Championships, North American, Nationals Championships)。

11月24日〜26日に開催される2017 IFBBプロリーグサンマリノプロを皮切りに、IFBBプロリーグのプロモーターは自国でのプロコンテストを開催します。これらのプロクオリファイは、連盟にかかわらず、世界中のすべてのアマチュアアスリートに公開され、IFBBプロリーグにおける唯一のプロ資格獲得の場です。

アメリカと同様に、NPCのアマチュア選手は、中断することなくあらゆるアマチュア連盟に自由に出場できます。このポリシーは、世界各地のプロクオリファイコンテストでも継続されます。

IFBBプロリーグがプロの認定を与えるコンテストは、IFBBプロリーグが開催するプロクオリファイのみです。その他のいかなるコンテストも承認しません。

IFBBプロリーグのプロクオリファイのみがIFBBプロリーグのステージで戦う唯一の方法です。これにはオリンピアも含まれます。

-以下略-

–2017年9月18日, ジムマニオン声明, 訳

ジムマニオンは、IFBBアマチュアとの提携を中止し、IFBBプロリーグとNPCのみで活動していくことを選択したのです。

このようにして、IFBBプロリーグとIFBBアマチュアは、全く関係のない2つの組織に分裂することになりました。

分裂後の2つの組織と、分裂が選手に与えた影響

IFBBプロリーグはそのままIFBBプロリーグとして、IFBBアマチュアはIFBBの名を直接受け継ぐ形でそれぞれ活動を始めました。(共に”IFBB”の文字が含まれますが完全な別組織)

この分裂により選手たち、特にアメリカ以外の国の選手には大きな影響を与えました。

NPC/IFBBプロリーグ

分裂前、アメリカの選手はNPCが主催する大会か、IFBBアマチュアが主催する大会を通してIFBBプロになることができました。またアメリカ以外の選手はまず、各選手の国のアマチュア大会で優勝し、その後IFBBアマチュアが主催する国際大会に出場するのがプロになる道でした。

アメリカの選手にとっては、NPCがIFBBプロリーグの傘下となっているので以前と変わらない状況ですが、アメリカ以外の選手はIFBBアマチュアを通してIFBBプロリーグのプロカードを取得することはできなくなってしまいました。

そのかわりに、NPC/IFBBプロリーグは、オリンピアアマチュアなどの、アマチュア選手にプロカードを発行する大会(プロクオリファイ)を、全世界で開催しています。

プロクオリファイは選手がどの連盟に所属しているかにかかわらず、またどの国の選手でも出場することができます。アメリカ以外の選手にとってはプロになれる可能性が大きく広がったことになります。

2018年9月のオリンピアアマチュアでは日本人の竹本選手と田口選手がプロカードを取得したことはご存知だと思います。

分裂以前にIFBBプロリーグに所属していたプロは、そのまま継続してIFBBプロリーグに所属することになりました。ミスターオリンピアに出場しているフィルヒース、ショーンローデン、ローリーウィンクラーなどの有名な選手は全員IFBBプロリーグに所属のプロ選手です。

IFBB(IFBBエリートプロ)

分裂前、IFBBはIFBBアマチュアとして世界各国で開かれるアマチュア大会を主催、管理しており、アメリカ以外の選手はその大会を通してIFBBプロになることができていました。

これに関しては分裂後も特別な変化はありません。

大きく変わったことは、分裂以前IFBBアマチュアとしてはプロ組織を持っていなかったため、分裂後新たなプロ組織が誕生したということです。これはIFBBエリートプロといいます。

IFBBは分裂以前からIFBBエリートプロの設立の準備をしていたらしいです。

現在、IFBBの国際大会を通してプロカードを取得した選手はIFBBエリートプロの選手になります。まだプロの人数が多くそろっていないことから、プロになったばかりの選手でもトップになれるチャンスがあります。

2018年にはエリートプロではじめての世界大会も開催され大きく盛り上がったようです。

アーノルドクラシックについて

アーノルドクラシックは、IFBBプロリーグとIFBBで共有されることになりました。

世界で開催されている5つの大会のうち、アメリカとオーストラリアの2つをIFBBプロリーグが、南アフリカ、ブラジル、スペインの3つをIFBBが主催することになっています。

2つの組織の違い

この2つの組織の大きな違いは、ボディビルをどのような存在にしていきたいかという指針です。

IFBBプロリーグは、ボディビルの興行的な面をより売り出していく方針です。つまり見に来てくれた人をどれだけ楽しませることができるかを一番に考えるということです。

そのためには、選手に対して大きな体を求めることになり、結果としてドーピングを暗黙するという選択をしています。

一方IFBBは、ボディビルをスポーツ競技として発展させていく方針です。将来的にはオリンピック競技にすることを目的としています。

そのため、国際的なスポーツ団体やオリンピック協会との連携も深めています。またWorld Anti-Doping Codeを採択し、ドーピングへの対策を整えています。

2つの組織の方針は、対極的でありながら共に意義のあるものだと思います。

今後両団体がどうなっていくのかはわかりませんが、できるのなら2つの団体が共にこれからも大きく成長していってくれたらと思います。

まとめ

ということで、IFBB分裂の理由と経緯を調べたので発表しました。

今までうすらぼんやりとしか知っていなかったことがわかったのですっきりしました。

ただ、これは僕個人で調べただけで公式の情報ではないです。

間違っていることもあるかもしれませんので、ちゃんとした情報を知りたい場合は各自で調べるようにしてください。